HOME » 人財育成資料室 » 研修虎の巻 » 研修の視覚物の役割とは?作る上での注意点は?

研修の視覚物の役割とは?作る上での注意点は?

研修の内容を作る上でも、研修の物理的な準備を進める上でも重要なのが、その研修で使用する視覚物です。
例えばテキストやレジュメ、スライド、ワークシートといったものが挙げられます。
こうしたものを制作する上での方法論や体系的な原理原則論は寡聞にして知りませんが、それぞれの要素としては存在すると思います。
今回は、私見ですが研修を企画、開発する上での視覚物の役割と作成上の注意点について考えていきます。
なお、受講生の分析や研修内容と難易度の設定、推敲の重要性は視覚物の作成時にも基本として存在しますが、そうしたものは「研修そのものの企画/運営の基本」と重複する内容と考えてここでは割愛させていただきます。
また、近年は動画なども急速に普及してきていますが、今回はそこには触れませんのでご了承ください。

 

研修の視覚物の役割とは

研修で使用する視覚物は、主に下記のような役割を持っています。

・研修内容の理解の促進及び支援
・研修の体験や印象強化の支援
・研修で出た意見や内容を記録するもの
・研修内容の持ち帰り

これらの役割をテキストやスライドでどのように分担しているかというと、下記のようにまとめられるのではないでしょうか。

研修内容の理解の促進及び支援:テキスト(レジュメ)、スライド、ワークシート
研修の体験や印象強化の支援:スライド
研修で出た意見や内容を記録するもの:テキスト(レジュメ)、ワークシート
研修内容の持ち帰り:テキスト(レジュメ)、ワークシート

当然、上記のようにはっきりと分類しきれない要素もありますが、大まかな部分ではそんなに間違っていない分類であると思われます。
このような役割分担があるという前提で考えると、それぞれの作成上の注意点も明確になってきます。

①研修のスライドをそのままテキストにしない(方がのぞましい)
②スライドに情報量を詰め込みすぎない
③ワークシートは書き込みやすいものにする

それぞれのポイントとなるところをみていきましょう。

 

①研修のスライドをそのままテキストにしない(方がのぞましい)

研修で使用するスライドもテキストも「受講生の理解促進のため」という意味では同じ目的を持っています。
しかし、スライドは「その場で受講生の印象に残る、インパクトを残す」ことが重要で、テキストは研修で得た知見を持ち帰るためのもの、後から見返すためのものというように役割分担をすることが重要と考えています。
この役割分担は逆にはできない種類のものです。

時々スライド≒テキストの研修を見かけますが、もしも可能であればこれは避けた方が望ましいと思われます。
スライドとテキストがほぼ同内容だと、受講生に「テキストに書いてあるから多少真面目に聞かなくても追いつけるだろう、大丈夫だろう」「後からテキストを読めばいいので今研修に集中する必要はない」と判断されてしまう恐れが発生しやすいのです。
ではどういう対策をするかというと、未来マネジメントでは

・テキストはなるべく文章で書いて後からでも内容が分かるようにする
・スライドは印象に残るように字を大きく、ビジュアルまたは図による訴求を心がける

という工夫と使い分けをしています。
スライド≒テキストの形式でテキストを作ると、コンテンツ作成時間の短縮という観点で非常に効率的、という大きなメリットを持っているので一概には言えませんが、テキストはスライドよりも「お土産(後から振り返ることが可能)」の要素が強いのでできる限り別々に作成したほうが研修の効果の観点ではよさそうです。
ちなみに、レジュメはフランス語で「要約したものを意味する単語」ですので、講演会や研修の要点を簡潔にまとめたもののことを指します。
したがって、レジュメはテキストよりも簡便なもの、と位置付けることができます。

 

②スライドに情報量を詰め込みすぎない

①の考え方を推し進めると、スライドはシンプルで印象に残るものの方が良い、ということになります。
スライドに情報を詰め込みすぎると受講生はどこを見たら良いのか迷子になる可能性があり、結果としてプレゼンテーションそのものが分かりにくくなってしまうからです。
研修において受講生の行動や視点の導線をどう設計するか、ということとも関連してくるのですが、複雑なものは避けたほうが良いでしょう。
スライドはなるべく簡便で分かりやすいものの方が印象には残りやすいでしょう。
また、これまで繰り返してきた通り「受講生が学びの主役」「テキストは後から見てもらえば良い」という観点に立つと、研修の時間はテキストそのものの読み合わせや講義の時間をなるべく減らす方が時間の使い方としては有効、ということになります。

したがって、研修で使用するスライドはテキストの丸写しであるよりは「重要ポイントの要約/提示」「ビジュアル化/図式化」という形で作ったほうが受講生の印象に残ります。
このことについては、ガー・レイノルズというプレゼンテーションについての著書をたくさん書いている人の本が詳しく、とても参考になりますのでそちらもご確認ください。

 

③ワークシートは書き込みやすいものにする
ワークシートは討議や研修の成果物の一つとなるのですが、なるべく書きやすいものにする必要があります。
そのためには、ワークシートに最初から記載されている情報の量は少なくすること、項目ごとの位置づけを分かりやすくすること、想定される記入の分量に合わせて面積を確保する等の工夫が必要になります。
また、オンライン研修でグループ討議をする際にはブレイクアウトルーム内でワークシートを画面共有してメンバーの意見を取りまとめていく運営が可能です。
その際に、例えばExcelシートの討議用シートを用意しておくなどの工夫があると受講生からすると親切だと思います。
研修講師はパワーポイントを使い慣れている人が多いですが、企業によってパワーポイントはそこまで使わないという会社もあります。
ワークシートはExcel等で作った方が受講生にとっては取り組みやすい場合も多いかもしれません。

 

研修で使用する視覚物について述べてきましたが、このように整理すると「情報量のコントロール、特にシンプル化して情報量を減らすこと」「受講生の視点や行動について導線の整理」が大切なポイントです。
そのためには、まずはどういう内容を入れ込むのかについては拡散して多くの「引き出し」を用意し、その上で受講生視点に立ってリハーサルやシミュレーションをして情報量を絞るという「プレゼンテーションの準備の基本」が研修の視覚物作成でも基本になっているといえます。
プレゼンテーションも研修も、プレゼンターや講師が内容の推敲とリハーサルを繰り返すことで練度が上がっていくものです。
話す内容やテキスト、スライドに残す内容よりも多くの話材や引き出しを用意して、実際に講師として登壇する際には話の内容を絞って分かりやすくするのが、講師側の準備や自信を持って話すという観点でも研修を成功に導く秘訣といえるのかもしれません。

未来マネジメントでは研修のテキスト作成や講師養成、スライド作成についてもご支援しています。
今回の内容をご覧になって興味関心のある方は遠慮なくお問い合わせください。

 

このコラムを書いた人:

株式会社未来マネジメント 取締役 営業部長 日吉良介

研修会社、人材開発業界で15年以上にわたり営業、講師、コンテンツ開発に従事している。
研修企画者として「日本にはまだ数少ないプロのインストラクショナル・デザイナー」と呼ばれることを夢見て日々研修の企画に取り組んでいる。
自身の講師としての得意テーマは「営業研修」で、これまでに3,000人以上の営業職が研修を受講している。
趣味は読書、プラモデル制作、フットサル。

関連するカテゴリーの記事

社員研修・人財育成に関するご相談はお気軽に。

お電話でのご相談はこちらまで 03-6272-8570 受付時間:9:00~17:30
お問い合わせフォームでのご相談