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番外編①採用と研修の費用について

番外編として、今回はある講師との話を基にした「費用」について考えていきます。

K先生のエピソード

いつもお仕事をお願いしているパートナー講師のK先生との酒席で伺ったエピソードです。
そのK先生が研修会社で一番初めに入った会社では、講師としてデビューするには営業も経験するそうです。
その頃の営業活動はホームページなんてないので問合せを受けて対応するでもなく、テレアポするでもなく、基本飛び込みの営業だったとのことです。
そこで飛び込んだ会社の一社が人材紹介の会社で、その時の経験が今でも忘れられないと仰っていました。
K先生が受付で人事担当者に取り次いでもらおうとしたところ、なんと社長室の隣の超豪華な会議室に通されて、社長本人が出てきたのです。
そこで名刺交換をしたところ、社長は先生の名前を確認しながら、

「Kさんっておっしゃるんですね。Kさんの会社の社長に伝えておいてください。人間は研修なんかじゃ変わらないよ、ってね」

と言われて、非常に怖い思いをしたそうです。
後からK先生がその会社について調べてみたところ、なんとK先生が所属していた会社の社長と営業で飛び込んだ先の人材紹介の社長は元々同じ会社で一緒に働いていたそうです。
その中でK先生の会社の社長は「人間は教育、研修で能力を身につけて変わる可能性がある」と考えて研修の会社を作り、人材紹介の会社の社長は「人間は元々優秀な人とそうでない人がいる。優秀な人をそろえるには採用するしかない」と考えて人材紹介の会社を作ったそうです。
当然社長同士は考えが全然合わないから仲が悪く、K先生は事情を何も知らないでその会社に飛び込んでしまったのでした。
まるで漫画みたいなエピソードですよね。

 

企業において優秀な人材は育てるべきなのか採用するべきなのか

このエピソードは「企業において優秀な人材は育てるべきなのか採用するべきなのか」という大きな哲学的問題を含んでいます。
もちろん0か100かで白黒はっきりつくような話ではないですし、どちらの言い分もそれなりの説得力があるのでなかなか難しいテーマです。
「皆さんはどう思いますか?」というようなダメな動画番組みたいなオチで放り投げてしまいたくなりますが、ビジネスの市場規模で見てみるのも一つの方法ではないでしょうか。
実は「人材ビジネス(人材派遣、人材紹介、再雇用支援)」の市場規模と「研修会社(企業向け研修サービス)」で市場規模を比較したらどうなるかというと、これはもうはっきり言って比較にならないくらい人材ビジネスの市場規模の方が大きいそうです。

 

実は研修サービスよりも採用市場の方がはるかに市場規模が大きい

矢野経済研究所の発表したデータによると、研修会社(企業向け研修サービス)の市場規模は2022年の推測値で5,370億円だそうです。
それに対して「人材ビジネス(人材派遣、人材紹介、再雇用支援)」の市場規模は、同じく2022年の推測値で9兆2,355億円という数字が出ています。
ちなみに内訳としては人材派遣市場が8兆8,600億円、人材紹介業市場が3,510億円、再就職支援業市場が245億円とのことです。
近い業界では求人広告市場が2022年は7417億円(全国求人協会発表)、採用アウトソーシング業界が2021年度628億円(矢野経済研究所)という数字が出ています。
人材派遣は業界特性として数字が大きくなりやすいので除外して考えたとしても、求人広告市場+人材紹介市場+採用アウトソーシングの数字、1兆1,555億円というのが「採用に関連する市場の規模」と言えるでしょう。

それぞれのサービスの単価で比較してみると「研修サービス」は対面で1日1クラスがだいたい20万円~50万円の価格帯が多いようです。
それに対して人材紹介は紹介した人の年俸の30%~40%が紹介報酬となりますから、年俸500万円の人を人材紹介で採用したとすると150万円~200万円位の金額がかかる計算となります。
求人広告の利用料はだいたい新入社員が100万円~300万円/月、中途社員が20万円~100万円/月、パートやアルバイト2万円~40万円/月が相場と言われているようです。
求人広告で中途社員を採用した場合の平均的な広告費は、営業職で47.4万円、ITエンジニアで55.9万円という数字が出ています(エン転職発表)。

ちなみに2024年6月の時点では今後、より採用市場の拡大が加速することが予測されていて、多くの人材紹介企業で紹介報酬の値上げを検討しているそうです。
人材紹介や派遣の会社が研修サービスをやっているパターンもあるのではっきり言いきれないですが、「企業において人材は育てるべきなのか採用するべきなのか」の問いかけに対しては、お金の面で言えば一般的には企業は研修よりも採用の方にお金を使っていると言えそうです。
もちろんこのことが先ほどの問いかけに対するすべての答えとはなりませんが、傾向値の把握という意味では参考になると思います。

 

研修は、実は「新卒採用時の支援材料」としても「離職に対しての保険」としても価値がある
企業向け研修サービス市場は採用市場にダブルスコアをつけられて負けていますが、実は研修会社で働く私個人としては今のこの状況を「ビジネスチャンス」として捉えています。
例えば1年間で新入社員が会社を辞めてしまったとしましょう。
その人に払った年収と求人の広告費、事務所の費用や備品など含めると600~800万円が企業にとっての損失と言われています。
中途入社社員で人材紹介を活用するとこの数字はもっと大きくなります。
数値化できないですが「同期に悪い影響が蔓延する」「職場が暗くなる」といった悪影響もあるかもしれません。
それに対して、研修は外部に払う金額は20万円~50万円で「人材の能力アップ」「人的ネットワーク拡大のきっかけ」「組織の活性化」等のメリットがあった上で「会社はきちんと研修の機会、成長の機会を作ってくれている」「辛いことも多いけど同じ状況で頑張っている仲間がいる」「良い仲間と一緒なんだから頑張ろう」という状況を作ることで「離職に対する保険」としても作用する可能性があります。
更に研修風景の写真を採用ページに載せることで「うちの会社はきちんと能力開発の機会を作っていますよ」「研修に力を入れていますので安心してください」と学生にPRできます。
学生は同じくらいの志望レベルの会社であれば研修をちゃんとやってくれる会社を選ぶというデータもあるそうですから、こうした要素も無視できません。

「研修は効果測定ができないからやる意味が感じられない」という意見を時に耳にします。
研修の効果測定が難しいのは研修会社に勤める私としても耳が痛いのですが、巨費を投じて採用した人が辞めてしまうのは非常にもったいない状況です。
「採用にかかったお金が損失にならないための保険」+「採用支援のPRポイントの一つ」としても研修は機能しうる、と捉えると「もう少し研修にお金を使ってもいいんじゃないか?」という気持ちになりませんか?
特に現在のように、少子高齢化で若い優秀な人材の取り合いが激化し、採用にかかる費用が高騰している中だと「研修」のコストパフォーマンスと意義は際立つように感じられます。

今回は番外編と言うことで少しカジュアルな語り口で「採用」と「研修」の費用について比較、分析してみました。
未来マネジメントは研修の会社ですので当然「人間は教育とか研修で能力を身につけて変わる可能性がある」「人材は育てるものだ」と考えています。
採用も大事ですが、教育についてお考えの企業様、特に中途社員の研修については豊富な実績を持っています。
是非お気軽にお問合せ下さい。

 

このコラムを書いた人:

株式会社未来マネジメント 取締役 営業部長 日吉良介

研修会社、人材開発業界で15年以上にわたり営業、講師、コンテンツ開発に従事している。
研修企画者として「日本にはまだ数少ないプロのインストラクショナル・デザイナー」と呼ばれることを夢見て日々研修の企画に取り組んでいる。
自身の講師としての得意テーマは「営業研修」で、これまでに3,000人以上の営業職が研修を受講している。
趣味は読書、プラモデル制作、フットサル。

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