HOME » 人財育成資料室 » 研修虎の巻 » 営業研修企画の重要ポイントとは?
営業は企業の業績を支える重要なポジションです。
しかし、営業の人材開発は多くの企業で、色々な理由があって難しいものとなっています。
よく「営業職は個人商店化しやすい」と言われますが、その言葉を現象面で整理すると下記のようなものが挙げられるのではないでしょうか。
①営業のノウハウは明確でないことが多く、ブラックボックスになりやすい
②営業職はプレイヤーとして個人で動くことが多いので、分析や指導が行き届かないことも多い
③以前から営業職は離職が多く、人手不足な状態が続き、組織レベルのノウハウにまで高めることができていない
このようなことが一次的な原因となって、例えば営業活動のマニュアル化/標準化が進まないため成果が個々人のやり方に依存する状況になったり、「効果的に仕事の能力を身につけたい」という若手の期待に応えられなくて、さらなる離職につながってしまうということが、かなり多くの営業現場で起こっています。
また、問題を抱えていても営業活動の状況が見えにくいため適切な指導やサポートがされないまま問題が隠れてしまう、という状況も頻発しているようです。
SFAやCRMといった営業活動の支援ツールやセールスイネーブルメントといった概念が出てきていますが、浸透度合いや活用度合いの観点で見るとまだまだ課題が多い会社が多いようにも感じられます。
こうした状況を考えると、営業教育の現場の課題については何らかの対策を打たなければ「目に見えにくい問題のお手玉状態」になってしまうことが多く、状況をそのままにしてしまったらずっと解決しないままで終わってしまいます。
「目に見えにくい問題のお手玉状態」への対策、またはそうならないための予防策として、営業研修の実施は一つの有力な選択肢として検討する価値があります。
今回のコラムでは営業研修企画の重要ポイントについて考察を行いたいと思います。
営業研修を企画する際に重要なのは下記の3つがポイントであると考えております。
①営業の仕事の分析を十分に行う
②営業の仕事をするためにどんな能力が必要になるのかの分析を行う
③受講対象者の経験に応じた難易度と内容で研修を行う
営業研修はその仕事をできるようになるための能力を身につける「職能研修」に分類されます。
従って、営業の仕事に直接的に役に立つことが非常に重要で、この点で受講生の納得を得ることができなければ、研修を行ってもその内容を行動に反映してもらえないため効果が上がりません。
「営業」という言葉はクセモノで、同じ営業職でも業種業態や会社による違い、顧客、取扱商品の違いによって、その構造はかなり違っています。
「業種業態が違えばもはや別の仕事」と言っても過言ではないのです。
そこで、営業の仕事の分析を十分に行うことで「自社の営業の仕事上の特徴はどういうものがあるか」について押さえた上で研修の企画を行うことが重要になります。
営業の仕事の分析については下記のような要素が挙げられます。
顧客分析:
顧客はどういう人?どういうことに課題を感じているだろうか?どういうことに価値を感じているだろうか?⇒したがって、どういう立ち回りが求められるだろうか?
営業プロセス分析:
営業のプロセスはどういうものだろうか?
案件の発生から納品、アフターフォローまではどういう業務と顧客接点が発生するのだろうか?
販売経路は?代理店経由での販売なのか、顧客に直で営業をするのか?
業績を上げるためにはどこがポイントになるのか?
意思決定/検討のプロセス分析:
その顧客の意思決定のプロセスはどんなものだろうか?ステークホルダーは多い?少ない?検討にかかる時間は長い?短い?
提供価値分析:
我々が提供している商品/サービスはどういう性格のものだろうか?無形商材?有形商材?高額?低額?競合と比べて何が優位?
営業の仕事の分析はマーケティング分析と重なる部分も多いです。
若手や新入社員に仕事を「教える」ためには、教える内容を固める意味で上記の分析を先に行う必要があります。
①に付随して、営業としてどういった能力を開発する必要があるかの分析が重要となります。
必要な能力・スキルとしては「プレゼンテーションスキル」「ヒアリングスキル」「質問スキル」「クロージングスキル」「交渉スキル」「専門知識」「人間関係構築スキル」といったものが挙げられます。
このように列挙すると、「うちの会社の営業職には全部必要ですよ」という意見を聞くことが多いですし、実際その通りだと思います。
しかし、すべての能力を十分に開発するのは教育にかかる日数と手間が増えてしまうので現実的には限界もあります。
仕事の構造によってその優先順位や重要性、またスキル発揮の質や方向性が変わってくるので、その見極めが重要なのです。
例えば営業のプロセスが比較的短く、ステークホルダーが少なくて(比較的)低価格な商品は、顧客が必要性を感じたら比較的即決しやすい商品やサービスであると言えます。
こうした商品やサービスはプレゼンテーションスキルの優先順位が高く、タイミングが大事なので訪問計画と行動量、キャンペーンなどの施策の活用が重要です。
社用車や、事務所で使う複合機を販売する営業などがこれに当てはまります。
他方、営業のプロセスが長く、ステークホルダーが多くて高額な商品やサービスは、こちらの都合だけでキャンペーンを行って売り込んでも売れません。
相手の意思決定/検討のプロセスに沿って長期的な計画で動く必要が出てきます。
プレゼンテーションスキルももちろん重要なのですが、その他に納品に向けたスケジュールやステークホルダー間の意見調整、社内の関係者の日程調整などを上手に進める交渉スキルが重要なことも多いようです。
生産現場や物流拠点で使う大型機械や大規模なシステムの営業等がこれに当てはまります。
このように、①の営業の仕事の分析と②の営業の能力の分析を両方行わないと、「この研修はうちの営業には合わない」と言われてしまうので注意が必要です。
営業研修は受講生の経験と理解レベルに合わせて研修を行わないと、受講生が内容を十分に理解できません。
これは営業職に限らない話ですが、経験の少ない受講生には「基本」を、経験のある受講生には「応用」または「実践のコツ」を持ち帰っていただくことが重要となります。
従って、営業経験が少ない新入社員や若手を対象とする時には「教える」「トレーニング」の志向が強いものの方が適しています。
営業を行う上で基本となるものを身につけてもらって、実践を積む中でよりスキルアップをしていただく、という考え方の研修運営となります。
それに対して中堅~ベテランを対象にする場合は、「教える」「トレーニング」の要素が不要な訳ではないのですが、それぞれ既に営業のノウハウや仕事についての一家言を持っていることが多いです。
そうした受講生を対象にする時には、「応用的な知見についての意見共有」「受講生間でもっと売るためのノウハウの共有」や「営業活動上の問題点の深堀」といった形で「教える⇔教わる」ではなく「受講生どうしの相互の共有」を重点とした運営にした方が効果的です。
新入社員~若手社員対象⇒個々人の能力開発アプローチを中心に行う
中堅~ベテラン対象⇒組織開発的アプローチを中心に行う
という分類が分かりやすいのかもしれません。
以上、営業研修を企画する上でのポイントについて整理してみました。
未来マネジメントではB to B営業研修、特にコンサルティング営業やソリューション営業と呼ばれる「高額」「高付加価値」商品やサービスの営業について非常に豊富な実績を持っています。
自社の営業研修はどんな内容のものが良いのかお悩みの企業様は遠慮なくお問い合わせください。
株式会社未来マネジメント 取締役 営業部長 日吉良介
研修会社、人材開発業界で15年以上にわたり営業、講師、コンテンツ開発に従事している。
研修企画者として「日本にはまだ数少ないプロのインストラクショナル・デザイナー」と呼ばれることを夢見て日々研修の企画に取り組んでいる。
自身の講師としての得意テーマは「営業研修」で、これまでに3,000人以上の営業職が研修を受講している。
趣味は読書、プラモデル制作、フットサル。