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【Woke Capitalism】

Woke Capitalismは2020年前後からアメリカを中心に言われるようになった言葉で、企業や資本家が教育、貧困、気候問題、経済開発、反人種差別等々に対して社会正義を目指すことを「Woke=目覚めた」資本主義と呼ぶようになった言葉である。
アメリカでは「政治的に正しい」行い、「社会的正義」を行う企業は時価総額が高くなる、という現象が見られる。
この言葉が出てきた当初は皮肉なニュアンスはなかったが、現在ではこうした動きに対して懐疑的、皮肉的な見方も増えてきて、日本語では「意識高い系」資本主義と訳されることもある。

元々はWoke という単語を、1960年代にアフリカ系アメリカ人を中心とする人たちが「人種的・社会的差別や不公平に対して高い意識を持つこと」の意味で使っていたのだが、現在のニュアンスになったのはつい最近のことである。
2016年、コリン・キャパニックというNFLのスター選手が国歌斉唱の際に起立せず、膝を立てたことが話題になった。
キャパニック選手は「黒人や有色人種を抑圧する国の国旗のために誇りを示し、立ち上がるつもりはない」と説明した。
当時のトランプ大統領はキャパニック選手とNFLに圧力をかけ、当時人気選手だったにもかかわらず、そのシーズン終了後にキャパニック選手と契約するチームは無く、キャパニックは選手を引退することになった。
その後、ナイキ社はそのキャパニック元選手をCМやキャンペーンで大々的に起用することで大きな話題を作ることに成功し、時価総額を5%も伸ばしたという。

問題なのはナイキ社自体がスェット・ショップ(立場の弱い低賃金の労働者によって成り立っている工場や企業のこと)と指摘されているのにその後もあまり体質改善が見られないことや、キャパニックはスターになっても、差別されている人たち全体の状況の改善になっていないこと等、多くの事象から「話題にはなっても社会正義が正しく行われているわけではないのでは?」という疑惑が浮上するようになったことである。
こうした状況が表面に出てきたことから、ナイキに追随してアクションを起こす企業は「社会的正義発揮のチャンスを広告の機会、売名行為のチャンス」のようにとらえているのでは、と懐疑的/皮肉的に見る目が出てきたのが現在の状況である。
底が浅い、実態がないにもかかわらず自分を大きく正しく見せようとすることを「意識高い系」とするのであれば、「意識高い系」資本主義と訳した人のワーディングセンスは天才的と言うしかない。

また、企業が社会的正義を追求することで政治の仕事や公共の福祉的業務を持って行ってしまい、結果選挙の意味がなくなる、という問題提起もされている。
このような状況からアメリカではWoke Capitalismが民主主義の崩壊を招くのでは、という危機感があるという。
日本の有識者からは「残念ながら日本はまだそこまで議論ができていない」「日本では別の形で民主主義が崩壊するのでは」という、別の観点で危機感のある意見が目立っている。

現在、SDGs等の社会的正義が広く告知されているが、Woke Capitalismという言葉の語意は我々に「その活動、実態あるものになっているよね?」「ただの売名行為じゃないよね?」と鋭く質問を突き付けてくる。
「意識高い系」同様、我々の活動に多様な反省的視点とニュアンスを提供してくれるキーワードと言えるだろう。

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