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自己効力感(セルフエフィカシー、self-efficacy)は、自分自身がある状況において結果に繋がるものをうまく成し遂げることができると認知している状態のこと。
カナダ人心理学者のアルバート・バンデューラが提唱した。
人財開発の文脈ではモチベーション論、部下の指導育成の中で引用されることが多く、近年モチベーション論の最重要キーワードの一つとして取り上げられることも少なくない。
バンデューラは結果やそれに向かう行動と心理的な期待(または予測)を下記のように整理した。
(中公新書 鹿毛雅治氏著『モチベーションの心理学』より引用)
バンデューラは、期待には「効力期待/自己効力」と「結果期待/随伴性認知」の2種類があると説明した。
例としてテレビかラジオの英会話番組を挙げるとすると、英会話番組を聴いていれば英会話は上達できる、と考えるのが「結果期待/随伴性認知」がある状態である。
そして、その手前の段階「英会話番組を聴き続けることができる/できない」ということに対しての主観的な判断が「効力期待/自己効力」がある/ないと分類することができる。
その上でバンデューラは、モチベーション論としては両方重要だが「英会話番組を聴き続けることができる/できない」の方がより基礎的なものであると説いている。
「頑張れ」「やればできる」と叱咤することも必要だが、「どうしたらうまくやれるか」「何に取り組めばいいか」を伝えることの方が重要である、というのがバンデューラの説く重要な教訓である。
自己効力感を持つことで課題に直面した際の達成率が向上したり、その努力行動の継続度合いや取り組み方に良い変化があったり、生理的にも恐怖感や緊張感の軽減が起こったりするとされている。
また、自己効力感のタイプには「自己統制的自己効力感(自分の行動統制に対するもの)」「社会的自己効力感(対人関係に対するもの)」「学業的自己効力感(学校などでの学業に関連するもの)」があるとされている。
ここまで説明すると「自己効力感が重要なのは分かったけど、どうすれば自己効力感を持たせることができるのか?」という疑問が当然わいてくる。
バンデューラらの研究によると、自己効力を生み出すもの(先行要因)には下記の4つがあるとされている。
1、達成経験:何かを達成したり、成功したりした経験
2、代理経験:誰かが何かを達成したり成功したりするのを観察した経験
3、言語的説得:自分に能力があることを言語的に説明されること、言語的な励まし
4、生理的情緒的高揚:その場での気分が高揚すること
最近「ガクチカ=学生時代に力を入れたことは何ですか?」という面接の質問はもう聞き飽きた、昔からされていて工夫がないと揶揄する言説を耳にすることがある。
確かに同じ質問ばかりされるのはうんざりするだろうし工夫がないと思うだろうが、この質問の意図は「あなたは自己効力感を持っていますか?それはどんな型のものでどんな経験から来ているものと説明できますか?」を翻案したものだ、という認識は持つ必要があるだろう。
自己効力感は新人採用だけでなく、中途採用が当たり前になる時代のキャリアを考える上でも重要なキーワードとして注目されている。