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【権力の堕落(腐敗)】

「権力の堕落(腐敗)」は、「権力を持てば持つほど行使したがる」「権力を持つほど権威主義的になる(偉そうになる)」という現象のこと。
テンプル大学の社会心理学教授であるデヴィッド・キプニス(1924~1999)が「Power Corrupt(日本語訳は権力の堕落/腐敗)」という論文の中で明らかにした現象である。

デヴィッド・キプニス教授は下記のような内容で心理学実験を行った。

1、大学生を二つのグループに分ける
2、大学生の下には高校生を付けて部下として作業を実行する
3、二つのグループのうち、片方のグループには報酬の決定権、人事権、解雇権があるものとした。
  もう一つのグループはそこまでの権限を与えず、作業指示を中心とした指示権限のみとした。

その上で、二つのグループにどのような成果の違いや振る舞いの違いが出るかについて観察したところ、大きな権限を持ったチームの管理職には下記のような観察結果が見られた。

1、大きな権限を持ったチームは頻繁に権力を行使したがる
2、大きな権限を持ったチームは部下の評価をしない、または過小評価する
3、大きな権限を持ったチームは部下の成果を自分のものとしたがる
4、大きな権限を持ったチームは部下との関係に距離があった(実験後の打ち上げに参加しなかった)

上記をまとめて「人は権力を持てば持つほど行使したがる」「人は権力を持つほど権威主義的になる(偉そうになる)」とし、権力を持つことで人は堕落するとまとめた。
また、権限が小さいチームにはこうした傾向が弱かったため、「権限が弱いと権力は堕落しない」ともしている。

コロンビア大学の社会心理学教授ハイディ・グラント・ハルヴァーソンは著書「誰も分かってくれない」の中で、上記の内容をさらに一歩進めて「人はもともと認知にかかるエネルギーをケチる傾向がある」という知見と結びつけ、「権力がある人は権力のない人を評価/観察する時に十分な認知エネルギーを使わずに『自分にとってメリットのある人かどうか』という印象で判断する」としている。
その結論のひとつは目上の人と対面する時には「第一印象が大事」「マナーが大事」といった至極普通なものだが、逆側からの視点として「管理職は部下の認知にエネルギーをケチってはならない」「権力を持っても偉ぶってはならない」という教訓は非常に重要なものである。

個々人の性格や文化、組織背景の他、権威を持った瞬間の年齢(精神的なものも含む)等の要素によっても結果は変わってくるかもしれない、という点で多くの心理学実験と同じように「状況によっては結論が必ずしもそうとも言い切れない」ことには注意が必要である。

どんな人でも権威によって腐敗する可能性があるということは、管理職になる人は十二分に理解しておく必要がある。
そういう意味ではもっと注目されてもいい概念と言えるかもしれない。

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