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成功の循環モデルは、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱した成功する組織の好循環(グッド・サイクル)に関する考察モデルのこと。
ダニエル・キム教授はマサチューセッツ工科大学の組織学習センターの創始者のひとりであり、またシステム思考の第一人者である。
ダニエル・キム教授は下記のような図を示したうえで、成功に向かって好循環する組織と悪循環する組織の違いを説明した。
好循環は
①関係の質を高める お互いに尊敬しあい、一緒に考える
②思考の質を高める 一緒に考えた結果、思考の質が高まり、当事者意識が芽生える
③行動の質を高める 自発的/積極的な行動が出てくる、チャレンジする
④結果の質が高まる 成果が出る
⑤関係の質が高まる 成果が出ることで相互に信頼感がより高まる
⑥思考の質が高まる 信頼感を基にお互いが腹を割って話し、より良いアイデアが出る
それに対して悪循環は
①結果の質を求める 成果、業績が上がらないのはなぜか?から始める
②関係の質が悪化する 対立が生じて責任を擦り付け合うようになる
③思考の質が悪化する 前向きで創造的な意見が出なくなる
④行動の質が悪化する 受け身の姿勢が目立つようになり、積極性が失われる
⑤結果の質が悪化する さらに成果が上がらなくなる
⑥関係の質が悪化する より関係が悪化し、皆が自己防衛的な態度を取るようになる
上記のような考えのもとに、ダニエル・キム教授は重要ポイントとして二つ挙げている。
一、結果を求めるためには関係の質を高める必要がある
二、関係の質を決めるのは対話/コミュニケーションの質である
ある意味で「急がば回れ」を組織の成功という観点でモデル化したもの、と言える。
成功の循環モデルに対しては、組織で起こっていることを説明するには複雑なものをやや単純化しすぎであり、またあまりにも裏付けが弱く直観的な上に原理原則をしっかり説明できていない、という批判もある。
しかし、その一方で組織の成果はリニア(要素間の因果関係が直線で結ばれる、原因と結果が分かりやすい直線的な関係)なものの結果ではなくサーキュラー(要素間の関係が円環状に結ばれる、複数の要素が関係する循環的な関係)なものの結果であるという指摘を含んでいて「ややもすると直接的に結果ばかりを求めてしまう考えの人に対して別の視点とプロセスを提供している」という点で非常に有用なものである。
企業が行う人材育成や、社員旅行、運動会などのイベントはリニアな、直接的な組織変革にはつながりにくい。
しかし、サーキュラーな好循環のきっかけとして捉えれば、非常に意義があるものと位置付けられる。
人事や総務部門が研修やイベントを実施する際の背景理論として意識するべきもの、といえるだろう。
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