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ホーソン実験以後、ジョージ・エルトン・メイヨーとフリッツ・J・レスリスバーガーを中心とした、ハーバードグループが立ち上げた経営に関するコンセプトで、モチベーションやモラールといった人間関係が企業の生産性に与える影響を重要視する考え方である。
それまで主流だった科学的管理技法へのカウンターとなった。
ホーソン実験の結果から「仲間意識」「仕事への誇り」「モチベーション」といった要素が生産性に大きな影響を与えることが認識され、メイヨーは「経済人(=テイラーが前提としていた人間観で、人は経済的な報酬のために仕事をする人)がいなくなって社会人(経済的報酬だけで動くのではなく、集団への所属意識や安心感、仲間と働く喜びのために仕事をする人)と呼ぶべき人に変わった」と考えた。
この認識はよほどメイヨーにとっても衝撃が強かったのか、現代の産業文明社会の進展が人間社会の秩序に重大な悪影響を与え、結果社会的一体感や家族的連帯感の喪失を起こしているとして産業文明社会批判や経済批判にまで繋がっていった。
この論考の延長線で、現代社会に存在する多くの企業を社会集団として捉えると、その成員は「技術的機能(technical skill)」と「社会的技能(social skill)」のバランスを失っていると説いた。
メイヨーは、原始共同体社会や中世の徒弟制度はこういったバランスを持った安定的な社会だったと理想として掲げ、現代の企業組織で働く成員は「社会的技能」の習得を通して社会秩序の均衡と安定性を取り戻すべきだと考えた。
メイヨーのこの考え方が「ソーシャルスキルトレーニング」「リーダーシップ開発」「コーチング」「アサーション」といったコミュニケーション技法や研修テーマの思想的な起源の一つとなっている。
また、日本企業では年功序列などの特徴と結びついて家族主義的な集団秩序と独特の文化を構築していたため、人間関係論の一つの成果物として考える向きも存在する。
日本企業の文化については、成果主義を導入する前は「日本企業のぬるい組織文化は国際的な競争力を育てる上で邪魔だ」という意見が多かったが、成果主義が短期業績に集中した結果、多くの企業で業績を悪化させてしまい、企業の中で生産性を継続的に高める仕組みが失われてしまった。
その後は「長期的な展望に立って人も事業も時間をかけて育てる観点は実は素晴らしいものだった」という手のひらを返した意見も多くみられた。
こういった点でも、いまだに人間関係論の評価は安定していないと言えるだろう。