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【マタイ効果】

マタイ効果とは、資金面や知名度などの条件に恵まれている学者は良い成果を上げて知名度をますます向上させ、結果ますます良い条件に恵まれるようになる現象のこと。
科学社会学の創始者、ロバート・キング・マートンが1968年に提唱した。
聖書のマタイ福音書にある一節「持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう」に由来する。

元々は学者による研究条件と研究成果(研究成果を上げると名声が上がるのでお金が集まって条件がよくなる)について説明したものだったが、経済的な話(お金持ちは元々持っている資本や人脈が充実していることが多く、質の高い情報が持ち込まれる等の要素でますますお金持ちになる)や、教育(勉強ができる子は読解力がつき、自信を持つのでますます勉強するようになる)でも成立すると考えられている。
人材開発の世界では、仕事の集中(良い仕事をする人には仕事が集中する)や、キャリア開発の機会(自分自身のキャリアに対してきちんと取り組んでいる人はますますキャリア開発の機会に恵まれる)でしばしば引用される。

こうした現象はあらゆる状況で格差の原因となりやすい。
現代のアメリカや日本では教育の機会と経済状況の両方でマタイ効果が働いている結果、階層の固定化と格差の拡大がますます進んでいると説明する社会学者も多い。

例:親ガチャで外れる→教育の機会が失われる→可能性開発の機会がないまま就職しなければならなくなる→高い賃金を得られるような仕事に就けない→子供にも高度な教育ができなくなる→階層が固定化する。

「親ガチャ」のような考え方が拡がることは個人の責任意識と努力にブレーキをかけ、社会の不活性状態の原因となりうる。
そういう意味でマタイ効果は弱肉強食を推し進めるような、非常に残酷な現象と言えるだろう。

マタイ効果に歯止めをかける反対の概念として「マルコ効果」と呼ばれるものがある。
「公平は一部の成功者の不満を引き起こすかもしれないが、より多くの人に満足をもたらし、満足の総量は後者のほうが大きい」とするものである。
つまり、成果を上げている人にリソースを集中するのではなく、全体に平等に与えることで全体的な底上げを図る考え方である。

「マタイ効果」と「マルコ効果」の関係性は、思想的には「自由主義」と「平等主義」の関係と整理できる。
人材開発の世界では「エリートに対する選抜教育」と「全体の活性化を図る組織開発」の関係と位置付けられる。
一般的には「全体の活性化」の方が重要とされているが、今後、この天秤がどちらに振れるのか注目のキーワードと言えるだろう。

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