HOME » 人財育成資料室 » 人材育成キーワード » 【マインドフル・リスニング】
マインドフル・リスニングはマインドフルネスな状態、つまり「今、ここ」に集中できている状態で相手の話を聴くこと。
コーチングや部下育成の研修で取り上げられることも多い「傾聴」スキルとはやっていることは非常に近いが、その意図に違いがある、とされている。
傾聴(アクティブリスニング)は相手に対してカウンセリングを行う、相手の感情や思考の整理を手助けする意図で行われるもので、主人公は「相手」である。
しかし、マインドフル・リスニングは相手の話をありのまま受け入れることに集中し、マインドフルネスの実践のために行う、という説明も多い。
そもそもマインドフルネスは、仏教において涅槃へと通じる8つの徳目「八正道」の実現のための具体的な心理プロセスとしての「瞑想」から始まっている。
八正道は正見(正しく見る)、正思惟(正しく考えて判断する)、正語(嘘や無駄話を避ける)、正業(殺生や盗み等を避ける)、正命(正しい生業を行う)、正精進(不善を過去、未来において起こさないようにする)、正念(常に今現在の状況に気づく)、正定(正しい集中力を持つ)の8つである。
この8つの徳目を持って「聴く」ことに主眼があるため、「自分は相手の言うことを正しく聴き、認識する」というものがマインドフル・リスニングの概要である。
従って、本来は「相手のために」というビジネス的なサービス精神よりは「涅槃=煩悩の消えた境地(への修行)のために」という仏教的な行のニュアンスで捉えるのが本来の語義に近いものと思われる。
とはいえ、マインドフル・リスニングについても「相手とのコミュニケーションを図る上で『聴く力』は重要である」「そのコミュニケーションのトレーニングのためにマインドフル・リスニングは非常に有効である」という説明も多い。
こうなってしまうと傾聴とマインドフル・リスニングの違いはあまりうまく説明できず、実際のところ多くの場面で明確な区別はそれほど意識的にされていないものと思われる。過去のものをうまく焼き直して新しいものを流行らせるのは産業教育業界、研修業界ではよくあることで、もしかするとそうした言葉の一つなのかもしれない。
マインドフルネスには「本来は宗教の行は別の目的のためのものなのに、企業研修で別の目的のために行うのはおかしい」という批判が存在する。
マインドフル・リスニングについても同様の批判が起こることが考えられる。
今後、マインドフルネス同様、企業研修の一テーマとして定着するのか、それとも一過性のブームで終わるのか、注目されるテーマである。