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【ピレネーの地図】

ピレネーの地図とは、あてにならない方針でもないよりはまし、むしろ不完全な仮説でもいいから方針を持つことが大切、という考え方を説明する諺。
アメリカ、ミシガン大学の組織心理学者カール・エドワード・ワイクが著書の中で紹介したことがきっかけで世の中に広まった。
尚、カール・エドワード・ワイクは「マインドフルネス」「センス・メイキング」といった概念の提唱者として知られている。
※関連するキーワードとして「OODAループ」「センス・メイキング」「リーン・スタートアップ」「ストーリー・テリング」の項目をご参照ください。

そのもとになったものは下記のようなエピソードである。
ハンガリー軍がスイス山中で機動演習をしている時に、ハンガリー軍小隊の若い中尉は偵察隊を送り出した。その後、雪が二日間降り続いた。
若い中尉は偵察隊を死なせてしまったのではと苦しんだのだが、3日目に偵察隊は戻ってきた。
彼らによると、道に迷って死を覚悟したのだが、メンバーの一人が地図を持っていたため落ち着きを取り戻し、雪をやり過ごしてから戻ってきたのだという。
その地図を確認したところ、アルプスの地図ではなくピレネーの地図だったという。
※このエピソードにも色々なパターンがあるようです。

ピレネーの地図はいわゆるVUCA環境と呼ばれる、環境変化が激しく見通しが立ちづらい状況でこそ必要であるとされる。
見通しが立たないからと言って行動を起こさないままであったり、判断を先延ばしにしてしまうと、より大きく状況が変化したり環境が悪化したりしてしまい、結果として状況に振り回されてしまうことも少なくない。
その時に判断の正当性と自信を持たせる、気持ちを落ち着かせるためには「ピレネーの地図」が必要なのである。

近年の経済や世界情勢はVUCA環境という言葉で語られることが多いが、少し引いた目で見てみると人類はいつも世界が理不尽であることに恐怖し、先のことを不安に思い、それをどうにか克服して落ち着かせるために何らかの材料やきっかけを必要としてきた歴史を持っている。
例えば星の配置に意味を見出して神話を語り「世界の成り立ち」に対する説明を創り出したり、亀の甲羅や皿に入った亀裂からこれから先のことを読み取ったりなど、占いや神話、宗教にはピレネーの地図的要素が多く含まれている。
これから先の企業経営はこうしたものを自前で作り出すことも上位層に必要な力とされている、という風に理解すると経営学と文化人類学の間にあるものを説明するものとして非常に重要な位置づけのキーワードと言えるだろう。

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