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パーパス経営とは、2021年に京都先端科学大学教授、一橋大学ビジネススクール客員教授の名和高司氏が著書『パーパス経営 30年先の視点から現在を捉える』(東洋経済新報社)という書籍の中で提唱した概念のこと。
「自社が社会のために存在する理由は何か」を考え、その信念を基軸に据えて行う経営のことで、価値創造の源泉である人を駆動させる原動力として「志」を重要視する経営の在り方のことである。
名和高司氏は資本主義の次は「志本主義」の時代が来ると説いている。
名和高司氏によると、現在の株主第一の資本主義は限界を迎えており、地球の環境問題や貧富の差の増大から金儲けだけを目標とする企業は今後市場、顧客、社会から支持を得ることができないため、パーパス経営の考え方を取り入れる企業は世界的な潮流であると説明している。
類義語には「ミッション」「ビジョン」「バリュー」があり、パーパスはその上位概念であるという説明もあればあまり細かく分類するよりは大きくざっくりとつかんだ方が分かりやすいとする説明もある。
その考え方には大きく下記のようなものが影響を与えていると思われる
・渋沢栄一の著書『論語と算盤』
・ドラッカーの一連の著作(特に『現代の経営』『マネジメント』『5つの質問』等)
・サイモン・シネック『Whyから始めよ』
パーパス経営が注目される流れは、1985年のプラザ合意以降、日本企業が目先の投資を重視するようになり、日本独自の強みを持っていた経営スタイルを捨てていく中で30年以上にも及ぶ長い停滞の時期を迎えたことへの反省が含まれている。
「センス・メイキング」が注目されたり、過去の日本企業の「現場と人的資源を重要視する経営スタイル」が再評価されたりする流れとかなりの部分で同期しているものと思われる。
パーパス経営はミッション、ビジョン、バリューなどと意味の上で重複する部分があり、また思想的背景からも決して真新しいものではないが、SDGsが2030年までの目標値でしかないのに対してパーパス経営は今後も続く企業経営の根幹となる考え方であり、そうした意味で「30年先の未来から今の経営を考える必要がある」と説明している。
現在、パーパス経営や「パーパス」という言葉自体が一つの流行語となって安易に使われているように感じられる。
しかし、その背景にあるものは伝統的かつシビアなものなので、一時期の流行やファッションで終わらせるのではなく、企業の新しい礎となっていくことが期待されている。