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バランスト・スコアカードは、ハーバード大学ビジネススクールのロバート・S・キャプランとコンサルティング会社社長のデビッド・P・ノートンが1992年に「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌に発表した業績評価システムのこと。
発端は1990年、二人が携わったプロジェクトの報告書である。
当時のアメリカの企業は短期的な財務評価に偏りがちだった。
ドラッカーの書籍や7つの習慣などでも説明されている通り、目の前の短期業績に集中しすぎると長期的な視点がおろそかになって「今日のために明日を犠牲にする」状況が生まれることも少なくない。
そこでキャプランとノートンは「顧客の視点」「内部プロセスの視点」「学習と成長の視点」の3つの非財務的な指標を追加することで、企業活動をより総合的に評価しようと試みた。
当時、本来の主軸である「財務の視点」と上記3つの視点はそれぞれ独立のものとして管理されていた。
しかしBSCの主眼である「業績を上げるためには顧客にどう満足してもらうか、そのためにはどういう内部プロセスで品質を上げ、また組織及び個人として学習/成長していくか」といった形で整理するとこの4つの視点の関連性が非常に重要であることが非常に分かりやすくなり、総合的に企業活動の進捗をマネジメントできるツールとして注目されるようになった。
企業の代表的なマネジメントサイクルである「PDCAサイクル(ウィリアム・エドワード・デミングの項目を参照)」と関連付けて取り扱われるようになると、「戦略の進捗をマネジメントするためのツール」に付随して「上位の戦略と現場をつなぐために明文化し、機能するもの」という使い方もされるようになった。
※バランスト・スコアカード自体が戦略策定のためのツールではないことには注意が必要である。
バランスト・スコアカードは一般的に下記のようなプロセスで運用される。
≪計画フェーズ≫
① 戦略の構築
② 戦略マップの構築
③ 尺度、目標値など「狭義のBSC」の構築
④ アクションプランの構築
⑤ 組織へのアラインメント
⑥ 実施計画
≪実行フェーズ≫
⑦ モニターと学習
≪改善フェーズ≫
⑧ 検証と適応
現在、バランスト・スコアカードを作成するためのシステムも販売されている。
また、ネット上には過去多くの企業、自治体や非営利団体が作成したバランスト・スコアカードが掲載されている。
面白いのは他の組織のものをマネしても効果が上がりにくい、とされていることである。
バランスト・スコアカードを各企業の実態に落とし込むためには各企業なりに手を動かし、皆で考えて作成することが大切なのである。
QC活動において模造紙が組織の一体感の象徴であったように、バランスト・スコアカードを各組織が作って運用していくそのプロセスこそが組織を一体化して強くするのかもしれない。