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セルフ・キャリアドックは企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談や多様なキャリア研修等を組み合わせて、体系的、定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、またそのための企業内の「仕組み」のことを指す。
※厚生労働省キャリア形成支援室作成の冊子「セルフ・キャリア導入支援事業 『セルフ・キャリアドック』導入の方針と展開」より抜粋
これまでも多くのキーワードの中で取り上げてきたように、近年企業と個人の関係性や働き方は大きく変化してきている。
旧来の日本の会社は「会社側が個人のキャリアを決める」志向が強く、それに対して若者は「自分のキャリアは自分で決める」志向が強かった。
しかし、IT化の進展や個人のキャリアの延伸と比較した企業の寿命の状況、国際競争の激化、事業内容の大幅刷新の必要性などの状況から、企業組織で働く従業員一人一人が社会や組織の変化を先取りする形で変革に対応していく必要性が出てきたため、一人一人が主体的にキャリアを考えて構築していく場を用意する取り組みとしてセルフ・キャリアドックの展開が期待されるようになった。
セルフ・キャリアドックに取り組むメリットとして下記のようなものが挙げられる。
・従業員の継続的な成長と働くことの満足度の向上
・人材の定着と意識向上から、企業にとっても生産性の向上が期待できる
また、労働者側からは下記のような効果も期待されている。
・新卒採用者の定着率向上
・育児、介護休業者の職場復帰率向上
・高齢者層の活性化
取組としては、社内外のキャリア・コンサルタントを活用したコンサルティングの実施や研修の実施、管理職の面談とキャリアコンサルティングの結果の統合といった要素が主軸であるが、セルフ・キャリアドックの導入プロセスとしては経営者のコミットメント、社内環境の整備から行うことを推奨されている。
その意味では、個々人のキャリアパスの決定を「組織寄り」「個人寄り」ではなく「中間にある対話の場で決める」ところに着地させようとする取り組み、という側面も持っている。
キャリア・コンサルタントが国家資格化したのは2016年4月施行の職業能力開発促進法からであるが、その有効活用を後押しするための施策という一面もあると推測される。
また、キャリアパスの構築主体を従業員寄りにすることは、実は「自己責任論」や「日本式能力主義論」が従来から抱えていた問題(例えば格差の拡大、公的な職業訓練機会の不足等)を解決しないまま助長することに繋がりかねないため批判意見も少なくない。
(旧来の個々人のキャリアパスを企業側が持っているのもそれはそれで別の問題がある)
こうした状況に対して今後どのような取組や施策が出てきて、どうなっていくのかも含めて非常に注目されるキーワードである。
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