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システム思考には様々な種類のシステムの多様な研究の技法が含まれるが、ここでは人材育成や企業研究の文脈で取り上げられるシステム思考について解説する。
システム思考は社会や企業組織、人間が抱える状況をそれぞれの要素とのつながりを持つシステムとして捉え、その構造を理解しようとする思考法である。
システム思考がビジネスの世界で活用されるようになったのはピーター・センゲの著書「The Fifth Discipline(学習する組織)」の出版による影響が大きい。
ピーター・センゲは、システム思考は「学習する組織」を支える柱の一つとしていて、組織の複雑性の理解に役に立つとしている。
それまでの企業活動での方針策定や目標設定、計画立案やコンサルティング会社によるサービスのアプローチは、ロジカルシンキングに代表されるようにデカルト由来の「還元主義」「方法的懐疑」に強い影響を受けたものが多かった。
つまり企業活動の方針立案は「問題や組織構造を細かく分解することで詳細な分析が可能になり、正しい打ち手が打てるようになる」として正しい状況把握と正しい判断があれば意思決定は絶対に間違えない、という無謬性が前提となっていた。
※ロジカルシンキングの記事を参照のこと
しかし、近年の変化の激しい経営環境下では、状況を完璧に掌握することや不安定な競争環境の先のことを予測することは難しく、自分たちの判断が思わぬ結果につながることや小さな変化が大きな地殻変動に繋がるようなことも大いにありうることが広く認識されるようになった。
結果、従来の思考法が前提としている無謬性と網羅性のアプローチの限界が知られるようになり、世の中に注目されるようになったのがシステム思考である。
システム思考では、目の前にあるできごとを単体で捉えたり、大きなものを分解して捉えたりするのではなく、その奥にある経時パターンや構造、そして組織の場合は組織活動の前提となっている意識や無意識の考え方や価値観を含めて対象とすることが大きな特徴とされている。
「変化こそ不変の真理である。流転こそ万物の真相である。(荘子)」といった言葉があるが、システム思考の根本にはこういった発想があるように思われる。
システム思考は構造やパターン認識を上手に使うことができれば小さな力で大きな変化を生み出すことができるとして、これからの変化の時代を象徴するテーマとして注目を集めている。