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サイロ・エフェクトとは、組織の成員の仕事のやり方、技術、知識が高度に専門化/複雑化された組織に見られる「縦割り現象」と、その弊害として生じる現象のことを指す。
現フィナンシャルタイムズアメリカ版編集長であるジリアン・テットが提唱した。
日本では「タコつぼ現象」という言葉が類似語として知られている。
ちなみにサイロとは飼料や工業原料などを効率優先で貯蔵する縦積み式倉庫のことだが、この言葉が浸透した結果「業務プロセスやシステムが連携していない結果無駄が生じやすい状況になること」をサイロ化と呼ぶようになった。
IT業界では比較的使われる言葉である。
組織に閉そく感をもたらす近しい原因としては、以前取り上げた「集団浅慮」「エコーチェンバー効果」も参照していただきたい。
サイロ・エフェクトの提唱者ジリアン・テットは、フィナンシャルタイムズに入社する前は文化人類学者として活躍していた。
文化人類学者は、フィールドワークとして複数年間どこかの村や民族の中に入って生活を共にし、観察分析を行う。
ちなみに、ビジネス研修や会議でもよく用いられる創造性開発技法/情報整理技法であるKJ法を開発した川喜田次郎氏も文化人類学者で、フィールドワークの結果出てきた膨大なデータを整理する技法としてKJ法は開発されたという経緯がある。
ジリアン・テットはフィナンシャルタイムズの編集者として活躍する中で、下記のようなことに気が付いた。
・現在の企業が置かれている環境は複雑であるため、それに対応するためには専門性を高める結果としてのサイロ化はある意味避けられない現象である
・サイロ化していく中で専門化だけでなく独自路線化も推進される。結果、組織活動がブラックボックス化したり部分最適を暴走的に推進したりしてしまいコントロールできなくなる等、無視できない大きな弊害が生まれる
・文化人類学者が他民族の文化の中で生活する際の「インサイダー兼アウトサイダー」の視点が、巨大組織の中で多々見られるサイロ・エフェクトの発見に有効である(反面、組織の中にいるインサイダーは問題に気が付きにくい)
サイロ・エフェクトの問題点を軽減するためのやり方として「部門をまたいだ会議、研修、勉強会の開催」「部門横断プロジェクトの実施」「人事異動」「非公式なネットワークの構築」等が挙げられる。
こうして考えると、一見無駄に思えるような「社員旅行」「企業運動会」「企業内部活動」等はそのメリットに自覚的か無自覚的かはともかくやはりやる意味はあった、と結論付けることができるだろう。
サイロ・エフェクトの問題を軽減/解消するための取組の研究はもちろん、文化人類学的アプローチがビジネスにどのような知見をもたらすのか、という観点でも非常に期待値の高いテーマである。
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