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エンパワーメント(empowerment)は、権限を与えること、知識や力、自信をつけさせることである。
ビジネスや組織づくりの文脈では「権限移譲」と訳されることが多い。
エンパワーメントはもともと中世封建社会の宗教権力と世俗権力の間の政治的力関係において用いられていた言葉で、カトリック教会勢力が貴族に権力を委譲することを意味する法的用語だったという。
その後、ブラジルの教育者/哲学者のパウロ・フレイレが被抑圧者への教育を提唱し、識字率向上運動を行う中でエンパワーメントに注目することで、社会活動の文脈で言葉が浸透していった。
パウロ・フレイレがエンパワーメントという言葉を使う際には、個人が自らの生活に対して統御感を持ち、夢や希望、幸せを感じる力を湧き出させるという意味だった。
この文脈での訳語には「湧活」という言葉も存在する。
その後の1970年代の学生運動や1980年代の女性の権利獲得運動、民族復権運動の中で頻繁に使われた。
現在、企業活動や組織活動の文脈でエンパワーメントという言葉が使われる際には、目標を達成していく中で当事者意識を持たせ、個々人のパフォーマンスアップを図る意図を含んで活用されることが多い。
カトリック由来の権力移譲のニュアンスと、パウロ・フレイレの湧活の両方の意味を併せ持つものと位置付けることができるだろう。
代表的な事例としては、星野リゾートがケン・ブランチャード氏の「1分間エンパワーメント」を自社に浸透させ、業績を大きく回復させたことが挙げられる。
従来のマネジメントでは、職務権限(職務の範囲を規定するもの)と職務分掌(職務を果たす上での職責、役割を組織内で整理・配分すること)が重要とされていた。
しかし、マネジメントに求められるスピードのアップや部門間連携、現場のフレキシブルな対応力の重要性アップや管理職不足等、現代の企業が抱える多くの課題を解決するための考え方として個々人のパフォーマンスアップが課題となると、それを実現する概念としてエンパワーメントという言葉が注目されるようになった。
ビジネスでのエンパワーメントで重要なのは①情報開示②ビジョン③チームワークとされている。
これからの組織はよりフラットになり、かつメンバーの一人一人に対してどう当事者意識を持ってもらうかが重要な課題となると推測される。
人材開発の世界ではこれからより重要なキーワードとなるだろう。
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