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アンドラゴジーとは教育心理学の言葉で「成人学習学」と訳される。
元々はドイツの教育学者アレクサンダー・カップが1833年に提唱した言葉だが、アメリカの教育学者マルコム・ノウルズによって発展的に定義され世に広められた。
対義語として子供の学習学を意味する「ペダゴジー」が存在する。
子供と大人の学習を対比すると、下記のようなことが一般的に言われている。
1、大人の学習は問題解決中心だが、子供の場合は教科中心である
2、大人の学習は自分の学習課題を理解しているが、子供の学習はそういった理解がなく、学校や教師に依存的な形になる。よって教師には大きな社会的な責任が課せられる
3、大人の学習はこれまでの経験の蓄積を豊かな教育資源として活用できるが、子供の場合は経験の蓄積が期待できない
4、子供の学習のカリキュラムは画一的であるが、大人の学習は学習内容への準備によってカリキュラムやプランを柔軟に変更する必要があり、ゴールとしては生活への応用が期待される
また、インストラクショナルデザインの専門家リー・オーエンズは、大人の学習を支援する観点として下記のような点を挙げている。
適切性:成人学習者は、学ぶ主題や情報と、その知識を使用する現実世界との間の直接的な関係を知っている
積極性:成人学習者は、受動的にただ座ってインストラクターの講義を見たり聴いたりするよりは、むしろ能動的に学習に参加する
自主性:成人学習者は、どこで何をどのように学習するのが自分にとって最もよいか、自分自身で分かっている
個別化:成人学習者は、学習のプライバシーを必要とし、また、個人の事情に合わせ自分の速さで学べるよう、自分で調整できる指導を必要とする
ノウルズの著書は当時も「当たり前のことを言っている」「大人の学習と子供の学習には明確な線がある訳ではなく、基本と応用の関係である」といった批判と議論がされていた。
その一方で軍隊や企業の教育研修の場面でアンドラゴジーの考え方は広範に採用されてきた。
特に医療関係やエネルギープラント、軍隊など失敗が大きな事故につながる現場では効果的/効率的/魅力的な教育を開発する手法として大きな効果を上げた。
一般的な分野でもeラーニングや通信教育、資格取得授業や教材の設計時の中心となる概念として注目され、発展的に継承されてきた歴史を持っている。
その後、小中高の授業でもアクティブ・ラーニングやワークショップ形式が取り入れられるようになる等、大人と子供の学習についてはより明確な線引きが難しい、混沌とした状況になってきている。
大事なことは「大人を子ども扱いしてはいけない」「子供を大人扱いしてはいけない」ということに尽きるのではないだろうか。
子供と大人の線引きに悩む教師や研修講師がいる限り、アンドラゴジーとペダゴジーの対比は有用な知見として考察され続けるものと思われる。
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