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【アダプティブ・リーダーシップ】

アダプティブ・リーダーシップは、ハーバード大学の教授でリーダーシップの専門家ロナルド・A・ハイフェッツ氏が提唱した概念で、「適応型リーダーシップ」と訳される。
日本では『最難関のリーダーシップ――変革をやり遂げる意志とスキル(原題:The Practice of Adaptive Leadership)』(2017年英治出版)等の本の中で紹介された。

ロナルド・A・ハイフェッツは、組織が直面する課題を「技術的課題(テクニカル・プロブレム)」と「適応課題(アダプティブ・チャレンジ)」の2種類に分類している。
技術的課題は知識、技術を習得、または高めれば特定の正解に到達できる種類の課題のことを指す。
例えば、業務のスキル不足を原因とした残業や知識不足を原因とした顧客への対応力不足は技術的課題であり、知識や技術を身につけることで将来的に解決できる。
こうした問題は目に見えやすく、既存の解決方法で解決できるため、結果対処は比較的容易であるとされている。

適応課題は、技術課題と比較した時に「自分自身の適応が求められる課題」という説明ができる。
適応課題は人々の優先事項、信念、習慣、忠誠心を変えなければ対処できない。発見を導くような高度な専門性だけでなく、ある凝り固まった手法を排除し、失うことを許容し、改めて成功するための力を生み出さなければ前に進められないのだ。
(出典: ロナルド・ハイフェッツ著『最難関のリーダーシップ ― 変革をやり遂げる意志とスキル』)

技術課題と比較して適応課題の存在が強調されるようになったのは、近年の「VOUCA状況」(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)を代表とする社会の変化と、その変化の結果として組織は変化への適応が必要となったからである。
ハイフェッツは、この適応課題に対してマネジメントを行う時の考え方がアダプティブ・リーダーシップであると説明している。
アダプティブ・リーダーシップを理解する上で重要なポイントは、「適応型課題」は「技術課題」の解決方法では解決できないため課題の本質を見極めることが非常に大切である、ということにある。

アダプティブ・リーダーシップを実践する人は、自分自身のものの見方や周囲との関係性を捉えなおすことを重視している。
メンバーの価値観を変えなければ解決できないように見える問題であっても、それが強制的である限りはうまくいかないからまずは自分の考えから変えるべき、という考えが前提にあるようだ。
上記を踏まえて、アダプティブ・リーダーシップでは「観察」「解釈」「介入」というプロセスを提示している。

これは個人的な考えであるが、2024年3月現在の日本の人材開発の課題で「適応型課題」に分類できるものとしては、「新人、若手の離職、またはオンボーディングが進まない問題」「色々な組織の活動変容が進まない問題」「部門間協力がうまくいかない問題」「DXがうまく推進されない問題」「重要な決定が組織に浸透しない問題」等、非常に広い範囲にわたっているように感じる。
広義では(組織の問題なのか個人の問題なのかは不明瞭だが)「Quiet Quitting」や「キャリア・ショック」「アンポータブルスキルが軽視される問題」も適応型課題なのかもしれない。

アダプティブ・リーダーシップの概念は、日本では『他者と働く―「分かり合えなさ」から始める組織論』(宇田川元一著、ニューズピックスパブリッシング)で分かりやすく紹介されたことでも知られるようになってきた。
アダプティブ・リーダーシップは、その問題意識や今の企業組織に起こっている問題に対する切込みの鋭さの面で非常に的確な考え方である。
今後も企業の問題解決とその進め方において重要な示唆を提供し続ける概念と言えるだろう。

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