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ビジネス、人材育成の世界で(狭義の)コーチングは、主にビジネスでの個人の成長や組織の発展を後押しする活動や手法のことをいう。
最近は傾聴と質問、提案といったコミュニケーションスキルを中核とした手法のことを指すことが多いが、実は統一的な見解は存在せず、例えば以前なら「ビジネスコンサルティング」と呼称していたものを「ビジネスコーチング」と呼称したりすることもある。
もともと「コーチ」は、中世ヨーロッパで交通の要所で馬車の産地だったハンガリーの地名「コチ」(Kocs)に由来する。
快適なコチ産の大型馬車が「コチの馬車(コチ・セケール)」と呼ばれるようになり、転じて「コチ」は「人を目的地まで連れて行く」ための「手段」であると認識されていた。
そこから「目的地に連れて行ってくれる手段」の意味に引っ掛けて「コーチ」と通称されたことが由来となって、やがてスポーツのインストラクターやトレーナーを指すようになったと言われている。
ビジネスの世界では、コーチングは1950年代以後、アメリカを中心にマネジメント層を中心に行われるようになった。
日本で盛んになったのはアメリカでの浸透からだいぶ後で、1990年代後半以降のことである。
アメリカではビジネスコーチングであってもあくまで個人への支援、という形で浸透していったが、日本では組織開発の文脈で使用された。
一説によるとカルロス・ゴーンが社長を務めていた時期の日産で取り入れられたのが当時の先進的、代表的事例と言われる。
当時の日産には「上にも下にも率直に物が言えない」文化が蔓延していた。
そこで、率直なコミュニケーションがとりやすい企業風土をつくるためにコーチングが導入され、日産の業績回復に伴って新しいマネジメントの手法としてコーチングは注目を集めた。
一般的なコーチングは、手法的には解決志向(人材育成キーワード【解決志向アプローチ】参照のこと)やヒューマンポテンシャル運動、ポジティブ心理学やニューソート、自己啓発セミナー、NLP(神経言語プログラミング)等に由来するものも少なくない。
日本企業でも重要なスキルとして定着し、対人関係や個人の考え方、行動に良い効果をもたらす可能性がある反面、「人を変える」「人が変わる」ことを扱うため、一歩間違えればルーツを同じくする自己啓発セミナーやセンシティビティトレーニングと同様の危険性をはらんでいるともいえる。
また、「部下の話をよく聞き、相手をほめて、承認すればよい」という安易で手軽なテクニック論という誤解も広く存在しているようだ。
コーチングに限らず、企業活動においては安易なテクニック論よりもその根本にある企業観、人間観を磨く方が重要、と言えるだろう。
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