HOME » 人財育成資料室 » 管理職実践講座 » 11.パワーハラスメント対策(ノンパワハラ・マネジメントのその後、そして今)①
2022年4月1日から中小企業にも義務付けられた「パワハラ防止対策」への取り組みですが、この原稿を書いている2025年4月で丸3年が経ちました。
職場のハラスメントに関する実態調査(厚生労働省、2024年3月)によりますと、パワハラ予防・解決の取り組みを実施していると答えた企業は95%に上ります。その中身は、パワハラに関してみれば、「相談窓口の設置と周知」(86%)が最も高く、「ハラスメントの内容、職場におけるハラスメントをなくす旨の方針の明確化と周知・啓発」(83%)、「相談したこと、事実関係の確認に協力したことなどを理由として不利益取り扱いをされない旨の定めと周知・啓発」(68%)など、対策としては進んできているようです。
しかし、こうした対策を講じてはいるものの、過去3年間でハラスメントの発生件数におけるパワハラの比率は64%に上っていること、さらに、過去3年間のパワハラの相談件数は(30%が変わらない、20%が増加している)減ってはいないのです。相談体制の拡充で水面下に潜んでいたものが顕在化していることは対策としては功を奏していると判断できますが、「周知・啓発」策は今ひとつというところなのかもしれません。
さらに、見逃してはならないのが、ハラスメント対策は適切に行われているか、ということです。実際にハラスメント対策に取り組む際には「ハラスメントかどうかの判断が難しい」と悩むケースは多くなっており、このことが「適切な判断と対応」を遅らせてしまっているようです。
従業員の側からすれば、「会社が、パワハラがあることは認識していた」(37%)、「会社がハラスメントの発生を知ったのに、特に何もしなかった」(53%)、「ハラスメントがあったともなかったとも判断せずあいまいなままだった」(61%)などと、会社側の対応に不満を持っている人が多くいます。
周知・啓発はしていても、発生時の適切な対応がなされているのはまだ少ないと言わざるを得ません。
これをハインリッヒの法則(労働災害の発生比率の説明として使われている法則。1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットがある)に例えるならば、今はまだ大きな問題になることなく済んでいるが、これを放置しておくといつか会社に損害を与えかねないほど大きな問題になる、ということでしょうか。
研修に関して言えば、弊社では2022年の上期(4月~9月)にはパワハラ防止セミナーや研修のお問い合わせを多くいただきました。残念ながらその何割かは「対策を講じていますというポーズを示すためのもの」でした。3年前に一度手立てを講じたから終わりではなく、認知・周知度が高まるほどに問題が顕在化してくると考えた方がいいのではないでしょうか。そして、現場でくすぶっている問題の火消しのためには、やはり一歩踏み込んだ教育もまた必要だと感じています。