HOME » 人財育成資料室 » 管理職実践講座 » 7.管理職のチームづくり③
良い成果を上げるチームにとって必須の条件は3つの要素(前述)を満たすことですが、いわゆる「思いの共有」は言葉で言うほどに簡単なことではありません。不平不満であふれているチームも多くあるのが現実です。
「コミュニケーションは組織の血液」といわれていますが、チームのコミュニケーションから考えてみましょう。チームにとって円滑なコミュニケーションは重要な要素であることは間違いありません。
ここで注意しておきたいことは、メンバー同士の仲が良いことは円滑なコミュニケーションを促進しますが、これはゴールの共有にも、それを目指す思いの共有にも直接的に影響はしないということです。もちろんメンバーの仲が良いことに越したことはありませんが、必須の要素ではないということです。
どういうことかというと、良いチームは時にケンカのような激しい意見のぶつかり合いを起こします。あえて意図的にそれを起こす場合もあります。それは、多様な意見のぶつかり合いからゴール到達のための最高の選択肢が生まれるからなのです。
この場合、ゴールへ向かう思いが共有されていれば不必要な自己正当化は必要なくなるのです。お互いが同じゴールへ本気で向かっていることを知っていて、不要な自己正当化によりゴールからそれてしまうことを避けることができるからです。
これがないとゴールするためではなく、自分の主張を通し、存在を正当化するための衝突になってしまいます。
現実には、メンバー同士が仲良くないと不安で、力を発揮するチームにはなれないと考える人がいます。このことは全面的に否定することではないのですが、「仲が良い=良いチーム」ではないということは押さえておいてほしいものです。
ステップとして考えるならばむしろ逆かもしれないのです。
①「ゴールとそこへ向かう思いの共有」
➠②「お互いに対する敬意と信頼が生まれる」
➠③「敬意と信頼によって仲も良くなる」
というステップのように。
1+1=2+αの相乗効果を出していくのがチームビルディングですが、1+1=2-βというマイナスの成果しかあげることができないチームもあります。
メンバーのお互いの能力を発揮できないどころか、引っ張り合う、打ち消しあうような状況が発生しているために起こっています。
これは、メンバー同士の仲が悪い組織で起こっているように思えそうですが、「仲を悪くしないこと」を意識することが原因で起こっているケースもあります。
トップダウン型でまわりがあまり意見を言えない、メンバーが自分たちがやっていることは正しいと信じ込んでいる、組織の和を乱さないことが重要だと考えていることなどが原因だと考えられます。さらに注意が必要なのは、こうしたチーム内では倫理観も自分たちのチームの論理に則ってゆがみ、正当化されてしまうことがあるということです。企業の不祥事が絶えない原因の一つになっているのです。
高い成果を出すチームでは、自己主張や意見の投げ合いが活発に行われます。しかしそこにはお互いに対するリスペクト(尊重・敬意)があり、多様性の価値を大事にしているため、人格否定のような相手を批判することを目的としたような意見はありません。メンバー全員が共有している目的が明確にあり、それを軸にまとまっているのです。