HOME » 人財育成資料室 » 管理職実践講座 » 6.管理職の部下育成③(管理職の部下育成(OFF・JTや自己啓発での能力アップを後押しする)
人材の育成、能力開発の方法として3つの柱があるといわれています。OJT、OFF・JT、そして自己啓発です。
管理職の部下育成という方向性からみると、やはりOJTが中心軸になることは間違いないでしょう。
OJTで成果を出すための「5つのS」をご紹介します。部下の状況や進捗の状況によってタイミングを逃すことなく発揮していかなければならない5つの機能発揮面です。
①指揮力を発揮する
指揮力を発揮するために必要なことは4つあります。
一つ目 「自部門をどうしたいのか」「その中で部下にどうなってほしいのか」の想いを明確にすることがスタートラインに立つということです。
二つ目 部下が成長していく青写真を示すことができなければなりません。部下の成長の地図づくりが必要です。
三つ目 プロセス目標を明確にした育成計画づくりです。この方向でこのように進んでいけば〇〇年後にこの姿になれるという道筋を見せてあげる必要があります。
四つ目 部下をその気にさせる統合力です。育成目標や計画は管理職が中心となってつくるために、ともすれば一方的な期待の押しつけになりかねません。これを避けるためには部下とよく話し合い、部下自身に「やれそうだ」「やってみよう」という気持ちを起こさせなければなりません。それが統合です。
②指導力を発揮する
指導力も部下の成長度合いや課題の難易度に合わせて発揮していかなければなりません。
丁寧に教えるというティーチングのウエイトと部下本人の自主性を強く引き出して自力での解決力をつけさせるというコーチングのウエイトを上手くバランさせながら指導していくことが必要です。
③刺激を与える
日々忙しく仕事をしていてもマンネリ化の波は押し寄せてきます。それを避けるためにも刺激策を適時講じていくことが求められています。その最たるものが「褒める」「叱る」です。
・「人は自分のやったことに対して、フィードバックを求めたがる」
→人は仕事で何らかのフィードバックが得られないと、仕事に対する張り合いや緊張感を失ってしまいます。
・「人は誉められることはよくやるようになるが、叱られるようなことはだんだんしなくなる」
→褒めると叱るは両輪であるということです。両方必要だということがいえます。
・「対個人だけでなく、集団の中での刺激づくりはできているか」
→部下が働く環境づくりも欠かせない要素となります。集団に対する刺激は個人に対する刺激にもなっていくことが多くあります。
④支援する
平均点での「成長」ならば、本人が頑張ればある程度できる場合があるでしょう。しかし、「仕事がよくできる」「さすがだ」というレベルに上げるために管理職としてどうするかまで考える必要があります。それが部下の成長をさらに後押しします。
そのためには、時には管理職自身も泥まみれになって、部下をヘルプすることが大切になります。
支援の在り方としまず率先垂範があります。必要な場面においてはやってみせるということです。次に、ヒントやアドバイスを与えるということがあります。もうひと工夫すればやれそうだという時に有効でしょう。
期待の目で黙って見守るということも支援の範疇に入ります。部下が自力で乗り越えることができそうだという時に有効です。また逆に、あえて突き放して逃げ場をなくすという支援方法もあります。部下に甘えが出て、管理職に頼る傾向が見えたときには有効でしょう。
⑤執行力を発揮する
意外かもしれませんが、部下育成で一番問題になるのが管理職自身の途中放棄なのです。その理由(言い訳)とし多く挙げられるのが「時間がない」「忙しい」「どうすればいいのかがよく分からない」などです。
色々な理由はあるにせよ、根底にあるのは「部下への想い(期待)不足のために熱意が続かず、見切りが早くなってしまう」「育成目標と育成計画がきちんとつくられていないために、途中でうやむやになってしまう」という二つのことだ、ということを押さえておく必要があります。
多くの管理職が自社のOFF・JTの企画に関わることはできませんが、部下の現状を見ていれば、アドバイスや動機づけはできます。例えば今回部下が参加するOFF・JTの内容から、部下に「今回の内容と現状から見てどういう位置づけにあるのか」「今回の内容から特に何をつかんできて欲しいのか」といった期待を示すことが、部下の学習スタンスを前向きにすることにつながります。
部下の目線から見たOFF・JTに対する関心は薄いという傾向がよく見受けられます。単純に言えば忙しいからOFF・JTに参加している余裕がないという声が実に多いということです。
OFF・JTの内容が部下にとって有用であるという前提(もちろんOFF・JTの企画内容がそうでなければいけないのですが)に立ってもそうしたことが発生しているのです。
その理由として、管理職側に対しては「日々忙しく仕事をしている、部下に仕事をさせていることが仕事をしていることだ(手足を動かしていれば仕事している)という考え方に支配されてしまっている」「目先の仕事処理能力があれば次の仕事もできると考えている」ことを挙げることができます。ですから「OFF・JTに参加する暇があったら1件でもお客さんのところに行ってこい」となってしまうのです。
それに呼応してしまっている部下側の理由としては、「この場合はこうする、こうすればこうなるという自分に役立つ答えがないものは時間の無駄」「今の仕事に直接関係のないテーマは自分の仕事成果の向上につながらないので無駄」などが挙げられます。
そうしてチーム全体が目先多忙病にかかってしまい、管理職としての能力向上も部下の成長も図れないままに時を過ごしてしまうのです。
部下の能力向上のために活用できるOFF・JTは多くあります。外部機関が主催している研修会や公開セミナーなどの活用も視野に入れる必要があります。専門資格の取得講座などはその代表格かもしれません。
上手く活用することで効果的に部下の能力開発を図ることができるという現実に管理職自身がもっと目を向ける必要があるでしょう。
自己啓発と言えばeラーニングや通信教育が代表的で、テーマによっては外部セミナーなども自己啓発の範疇に入るでしょう。最近ではマイクロラーニングという学習手法も広がりつつあります。これを自己啓発の領域に入れていいかは悩むところですが。
管理職の部下育成からみた自己啓発となると、「助動詞のつけ方」がポイントになります。
「~すべきだ」というよりも「~したいから」で、部下に興味あること、やりたいことだけをやらせていたのでは部下の成長につながらないということです。もちろん言葉通りに解釈すれば「自己啓発」ですから、全て支配的に「~すべきだから、~を学ぶべきだ」という訳にはいきませんが、部下育成の支援方法のひとつとして押さえておく必要があるでしょう。
Off・JTと自己啓発の支援で大切なことがあります。中間フォローと終わった後のフォローです。
報告書として提出させたり、長時間の報告会はなかなか難しいでしょうが、たとえ短時間であっても学んできたことのフォローコミュニケーションはとる必要があります。
これがないと、結局は「言いっぱなし」「やらせっぱなし」になってしまい効果が上がらないどころか、今後の継続にもつながりません。自分の成長のために学ぶという意欲さえ低下させてしまいます。
以上、それぞれについて述べてきましたが、部下育成をより効果的に進めるにはOJT、OFF・JT、自己啓発の3つが連なっていくことが望ましいということがお判りいただけたのではないかと思います。